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ハドロン宇宙国際研究センター(ICEHAP)は、超高エネルギーハドロン(陽子、中性子等)の放射源と粒子加速メカニズムを宇宙ニュートリノ探索と天体活動現象の理論シミュレーション研究の連携を通して解明することを目的として「高エネルギーニュートリノ天文学」と「プラズマ宇宙研究」の2部門により2012年に発足されました。2020年からは独立した全学センターとして改組され、千葉大学の看板研究センターとして研究・教育活動を推進するとともに、世界の研究者コミュニティーに開かれた研究組織として運営を行っています。
ニュートリノは他の物質とほとんど相互作用しないため、宇宙空間を直進することができます。地球に飛来する高エネルギー粒子(宇宙線)の起源を明らかにすることは100年来の謎でしたが、宇宙線は磁場によって曲げられたり、宇宙背景放射と相互作用してエネルギーを失ったりするため、その発生源を特定することは困難です。高エネルギーハドロン(陽子・中性子など)から放射されるニュートリノを捕えることによって、高エネルギー宇宙線の放射源をピンポイントで特定することができると期待されています。 ニュートリノ天文学部門では、南極点で行われているニュートリノ観測プロジェクト「IceCube(アイスキューブ)」の世界最大規模の検出器にて検出された高エネルギーニュートリノ事象の解析結果を用いてこれまで、2012年の高エネルギー宇宙ニュートリノの2事象の世界初の観測成功や、2017年の宇宙ニュートリノの放射源の初同定などの研究成果をあげ、宇宙の謎の解明に向け取り組み続けています。
宇宙の物質のうち80%以上はダークマター、残りの大部分は電離気体、すなわちプラズマ状態にあります。プラズマ中ではイオンと電子がほぼ自由に動き回っていますが、個々の粒子が電荷を持っているため電磁場と強く相互作用します。このため、プラズマの運動に伴って磁場が強められたり、電磁力によってプラズマが加速されたり、磁気エネルギーが爆発的に解放されたりします。プラズマ宇宙研究部門では、磁場とプラズマが関与する天体活動現象の解明に取り組み、成果をあげてきました。高エネルギーニュートリノ放射天体の候補である活動銀河中心核から噴出するジェットの形成機構、ジェット中に形成される衝撃波面近傍での粒子加速機構等を、「富岳」などの高速計算機を用いた大規模数値シミュレーションによって解明しつつあります。最も身近な天体である太陽の活動から、ダークマターと銀河団プラズマの相互作用に至る多様な天体現象を研究対象としています。