IceCubeアップグレード&Gen2計画 | ニュートリノ天文学

IceCubeのこれから

2011年からフル稼働を続けてきたIceCube検出器ですが、IceCubeが目指す次のステップとして、2つの計画が進行しています。

1つは、2022年に予定されている「IceCubeアップグレード計画」。もう1つは、次世代ニュートリノ望遠鏡計画「IceCube-Gen2(ジェンツー)」です。

IceCubeアップグレード計画

IceCubeアップグレード計画では、現行のIceCubeのDOM検出器が埋設されているIceCubeアレイと呼ばれる部分に7本の穴を掘り、そこに約700台の高性能新検出器を較正装置と共に、検出器と検出器の間がより密になるよう埋設します。(下の図の左側の赤丸の部分。)

これにより南極点の氷河中で安定しない光の伝搬を初めとする測定中に起こる系統誤差を低減させ、より低いエネルギーのニュートリノ観測の性能を各段に向上させます。

IceCubeアップグレード計画

2022年に開始される建設時に埋設される高性能新型光検出器には、私たち千葉大学チームが開発した「D-Egg」光検出器が採用されました。およそ300台のD-Eggがドイツとアメリカの大学が開発した別の検出器や較正装置と共に南極点に送られ、氷河下に埋設されます。
建設に向け、D-Eggの製造及び耐性試験が行われています。(2020年現在)

先行のDOM光検出器に比べ、新型のD-Eggはいくつもの改良された機能が加えられています。
例えば、DOM光検出器には、要となるPMT(光電子増倍管)が下向きに1つ備え付けられていますが、新型D-EggにはPMTが上下に1つずつ設置され、DOMが丸型なのに加えD-Eggは名前の通り卵型になっています。PMTのサイズもDOMに設置されたものより、一回り小さいものが採用され、検出器の直径がDOMは30cmだったところ、D-Eggは25cmとスリムになっています。このスリム化には大きな利点があります。細長い形状にすることで、氷河に穴を掘る際の掘削コストが約20%減少できます。建設には莫大な費用が必要になるため、コスト削減はとても大切です。性能もDOMに比べ上方向からのチェレンコフ光の検出効率が大幅に向上し、トータルで感度が3倍になります。

DOM検出器が埋設されている様子

DOM検出器が埋設されている様子

ドリルの先から80度の熱湯を噴射しながら、氷河の硬い氷を溶かしつつ2.5kmの深さまで穴を開けていく。

穴にお湯が溜まった状態で、ケーブルに連なった検出器を次々と沈めて埋設する。

D-Egg埋設時には、掘る穴のサイズが小さく済むので、建設費用が抑えられる。

DOM検出器の詳細はこちらDOM検出器

D-Egg検出器の詳細はこちらD-egg検出器

次世代ニュートリノ望遠鏡計画「IceCube-Gen2(ジェンツー)」

アップグレード計画の3年後にはIceCube-Gen2という次世代ニュートリノ望遠鏡計画も予定されています。およそ10年での建設完成を予定し、建設開始の6年後には部分的な稼働を目指しています。
現在稼働中のIceCube実験の検出器埋設氷河部分(下の図の赤い部分)を抱き込むように新型の検出器が埋設され、より多くのニュートリノ事象を正確に検出できるよう性能を向上させます。

完成後のIceCube-Gen2のイメージ
完成後のIceCube-Gen2のイメージ: 赤い部分が先代のIceCube。緑色の部分はそのアレイ。©SATO, Akiko

IceCube-Gen2では、IceCubeアレイ(上の図、緑色の部分)に先行のIceCubeと比較して約2倍の間隔で約1万台の光検出器を埋設します。検出範囲を約8倍にすることで、ニュートリノ点源検出感度を5倍以上にし、より多くのニュートリノ起源天体を同定することを目標にしています。

ジェンツーペンギン

今後の予定

2020年~

D-Egg製造開始(約300個)

2022年~

IceCubeアップグレード建設開始
D-Egg300個を含む計700個の高性能新型検出器がIceCubeの中央部分に埋設される。

2026年~

IceCube-Gen2建設開始
現在稼働中のIceCubeのおよそ8倍の広さに検出器が埋設される。