D-Egg光検出器 | IceCube光検出器 | ニュートリノ天文学

千葉大学で生まれた 新型光検出器D-Egg

2019年7月、アメリカのIceCubeグループ本部と全米国立科学財団(National Science Foundation)により、IceCubeアップグレード建設計画が正式に発表されました。建設は2022 年頃に開始され、氷河下に埋設した現行の検出器の隙間を埋めるように、3 機種の新型光検出器およそ700台が数多くの較正装置と共に埋設されます。その光検出器の1機種に、当センターのニュートリノ天文学部門が開発した新型光検出器「D-Egg(ディーエッグ)」が採用されました。

このアップグレード建設は、IceCubeが目指す2 計画の内の1つにあたり、2026 年からはIceCube-Gen2(アイスキューブ・ジェンツー)の建設も予定されています。この建設完了時には、実効検出体積が現在の約8 倍となり、より多くのニュートリノを検出し、その起源天体を同定することを目標としています。

IceCubeアップグレード建設計画・Gen2計画については、コチラ

D-Eggのイメージ Gen2建設により南極点の氷中に埋設されたD-Eggのイメージ ©SATO, Akiko

『2013 年の秋、ドイツ・ミュンヘンであったIceCubeのプロジェクト会議の時である。横にいた石原さんが、「こんな検出器がいいんだよね」と突然、紙にかいた落書きのような絵を見せてくれた。そこには、縦に細長い卵のような形をした図形の中に上下二つの向きに光電子増倍管とおぼしきデバイスの絵がかかれていた。D-Eggとの最初の出会いである。』

-吉田滋著「深宇宙ニュートリノの発見 ~宇宙の巨大なエンジンからの使者~」(光文社新書)より

千葉大学で開発されたD-Egg新型光検出器の大きな特徴は、Eggが名前についている通り卵のようなその形と上下に収められた2つの光電子増倍管です。現行検出器「DOM」に比べて形もスリムになっています。これは、南極点の氷河に埋設する際に莫大になる掘削コストを抑えるという利点があります。この形状にすることにより、掘削コストの約20 %減が可能となります。

その他にも、たくさんの工夫と日本の最新技術がD-Eggには詰まっています。
ひとつひとつ見てみましょう。

D-Egg光検出器 図解

D-Egg光検出器 図解
a 光の屈折や反射を防ぎ、チェレンコフ光をPMTに取り込みやすくするゲルが、ガラスとPMTの間に流し込まれている。時間がたつと固まるため、PMTをガラス内で固定させる役割も果たす。
b 高性能PMT(上向き)は静岡にある浜松ホトニクス製。
現モジュール検出器DOMと比べ様々な方向に対する感度が大きく向上する。
c 400気圧以上の氷中の気圧にも耐えられる日本製のガラス。千葉県の柏に所在する岡本硝子製。
d ファインメット
鉄製の薄い板でPMTを囲み、磁場などの影響を防ぐ。
e 検出器を吊るすワイヤーを設置するためのハーネス
氷河下に埋設された際の気圧や温度の影響を受けて変形するガラスに合わせて伸縮する。
f カメラ
氷に穴をあける際に溶かした水が氷る過程や水泡の発生などを観察するために撮影を行う。
g フラッシャー
リング状の基板に搭載された12 個のLEDで氷の特性を調べる。
h 浜松ホトニクス製高性能PMT(下向き)
下向きに取り付けることにより、地球を通り抜けてやってくるニュートリノも感知しやすい。
i メインボード(データ収集・制御基板)
PMTからくる信号を読み出してデジタル化し、メインケーブルへ送る。
j 高電圧分圧回路
高電圧をかけ、検出した光を電子信号に換える。
k 横についたケーブルは、地上の観測施設とつながっており、データの送信や電気の供給を行う。

浜松ホトニクス製 光電子増倍管(PMT)

光電子増倍管(PMT)

DOM検出器に使われているものと同じ浜松ホトニクス製のPMTが、採用されています。DOM検出器に比べD-Eggは細長く作られているため、PMTも小さいサイズのものを使用しています。DOM内蔵のPMTは、直径が25 cmありますが、D-Eggに使われているPMTは直径20 cmほどです。

また、DOMには下向きにPMTが1つ設置されているところ、D-Eggには2つのPMTが内蔵され、上と下を向くよう設置されています。これにより、様々な方向から飛んで来て、時には地球内部を通り抜けてくるニュートリノをより確実にキャッチすることが可能となるのです。

DOMtoDEgg

D-Egg 新型検出器 製造・試験

2023年に建設が始まるIceCubeアップグレードに伴い、およそ300 個のD-Egg新型光検出器の製造が2020 年2 月に開始されました。検出器の開発はもちろん、機器製造や性能試験のほとんどが、千葉大学西千葉キャンパス内に所在する研究室にて研究員や学生の手作業により行われています。