X線天文学 | マルチメッセンジャー天文学

X線天文学は、リカルド・ジャッコーニ博士らが1962年にX線観測装置を観測ロケットに搭載し打ち上げたところ、誰もが予想していなかった強いX線がさそり座の方向からやってくることを発見したことで、その観測の窓が開かれました。日本では1979年に打ち上げられたX線天文衛星「はくちょう」を初めとして、断続的に大気圏外に検出器を打ち上げて観測を行なっており、現在では国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されたMAXIが活躍中です。

ISSに取り付けられたMAXI
国際宇宙ステーションの日本の実験棟きぼうの暴露部に取り付けられた、全天X線監視装置MAXI(©️JAXA/NASA)

夜空を眺めていると、宇宙とは非常に静かで、時間によって変化しない穏やかな場所という印象を持っている方も多いと思いますが、実際には先述のガンマ線バーストを始め、X線やガンマ線の帯域では日々様々なタイムスケールで、高エネルギーの放射を発する新しい光源が、現れては消えていくという騒がしい世界です。そのような突発現象は、ブラックホールや中性子星などの非常に高密度な天体に起因しており、MAXIはX線帯域における全天観測装置として日夜を問わず宇宙での高エネルギー突発現象の監視を続けています。また、ISSの米国モジュールには、NASAのX線望遠鏡NICERが搭載されています。NICERはMAXIと違って視野が狭く、突発現象を発見することには適していませんが、MAXIとは桁違いのX線感度を擁しています。そのため、近年ではお互い異なった性質を持つMAXIとNICERを、ISS上のノートPCを介すことでネットワークで繋ぎ、MAXIで突発現象を発見した際には即座にその座標をNICERに伝えて観測を開始することで突発現象の詳細な情報を得る、国際連携観測OHMANも開始されました。

ISS軌道上でのMAXI-NICER国際連携OHMAN
MAXI-NICER軌道上連携OHMANの概念図 ©NASA/JAXA(NASA/GSFC OHMANプロポーザルの表紙に加筆)

このように近年整備された高エネルギー突発現象に対する包囲網をもとに、本研究室では未知のニュートリノ源に対し、南極からのニュートリノ観測と、宇宙空間からのX線観測によるマルチメッセンジャー手法を用いてその起源、放射機構、粒子加速機構の物理の探索を行っています。