ニュートリノ天文学

ニュートリノ天文学部門では、南極点で行われているニュートリノ観測プロジェクト「IceCube(アイスキューブ)」の世界最大規模の検出器にて検出された高エネルギーニュートリノ事象の解析結果を用いて、極限宇宙の産物といえる宇宙線のこれまで謎とされてきた発生源を同定することを研究のミッションとして揚げています。

IceCube
南極点に建設された世界最大規模のニュートリノ観測検出器「IceCube」

ニュートリノは他の物質とほとんど相互作用しないため、宇宙空間を直進することができます。地球に飛来する高エネルギー粒子(宇宙線)の起源を明らかにすることは100年来の謎でしたが、宇宙線は磁場によって曲げられたり、宇宙背景放射と相互作用してエネルギーを失ったりするため、その発生源を特定することは困難です。高エネルギーハドロン(陽子・中性子など)から放射されるニュートリノを捕えることによって、高エネルギー宇宙線の放射源をピンポイントで特定することができると期待されています。 これまで、2012年の高エネルギー宇宙ニュートリノの2事象の世界初の観測成功や、2017年の宇宙ニュートリノの放射源の初同定などの研究成果をあげ、宇宙の謎の解明に向け取り組み続けています。

千葉大学IceCubeチームは2011年に完成したアイスキューブによる観測データを解析した結果1.2PeV(PeVはエネルギーの単位で10の15乗電子ボルト)と1.4PeVのニュートリノが氷と相互作用して放射されたチェレンコフ光を捕えたと考えられる事象を発見し、2012年6月に開催された国際会議で発表しました。理論的に予言されていた高エネルギー宇宙ニュートリノが実在することを示す世界初の観測成果でした。

その後も高エネルギー宇宙ニュートリノの検出は続き、2017年9月に検出された宇宙ニュートリノ事象の情報を元に世界各国の観測施設が追尾観測を行い、史上初の高エネルギーニュートリノの放射源天体の同定に成功しました。