マルチメッセンジャー天文学

マルチ(複数の)メッセンジャー(使者、伝令)を用いた天文学

地球に降り注ぐ宇宙線

天文学は、古くから人の眼で見ることができる光(可視光)を頼りに行う可視光観測によって発展してきました。天文学の父として有名なガリレオ・ガリレイが天体観測のために作成した望遠鏡に始まり、可視光で宇宙をよりよく見るために生み出された天体観測の手段ですが、宇宙は広大で常に霧がかかったような状態であるため、いくら望遠鏡の精度を上げても、可視光での観測には限界があります。

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20世紀に入り、その天文学の形が大きく進化しました。可視光以外の手段で観測する新しい実験装置が開発され、電波やX線ガンマ線といった可視光以外の光・電磁波による天文観測が可能になりました。このような、様々な光・電磁波を用いた天文学を多波長天文学と呼びます。

一方で、光は存在の知られている様々な種類の素粒子の1つでしかありません。宇宙の天体からは光以外の粒子が飛んできていることも知られています。中でもニュートリノと重力波は、電荷がないため宇宙空間をまっすぐ飛んで来ます。もしこれらを地球上で見つけられれば、放射の元となった天体を調べる天文学ができる、と長らく言われてきました。このような、電磁波以外のメッセンジャーも用いて宇宙の謎を解明する学問を「マルチメッセンジャー天文学」といいます。

21世紀に入り、これらニュートリノと重力波の検出がようやく現実的になってきていました。そしてついに2017年に現実のものとなりました。まず8月に、重力波の信号が検出されたのと同時に信号の方向からガンマ線バーストと呼ばれる天体が電磁波で観測されました。そして9月に、今度は高エネルギーニュートリノが検出されたのと同時にその方向からブレーザーと呼ばれる天体が電磁波で観測されました。