2025.07.11 メッセージ | 広報活動

千葉大学ハドロン宇宙国際研究センター長メッセージ

研究成果発表に寄せて

2025.07.11



千葉大学ハドロン宇宙国際研究センター
センター長 吉田 滋


 千葉大学IceCube 実験グループは、最近でこそ検出器開発からマルチメッセンジャー天文学観測によるニュートリノ放射天体の同定まで多様な成果を上げるまでになりましたが、最初は何から始めたかといえば、「超高エネルギー宇宙ニュートリノの探索」です。高エネルギー極限帯域でのニュートリノを捕まえることによって、「最高エネルギー宇宙線」の起源に迫ろうというものです。2004年にIceCube 国際共同実験の予算が米国で認められ、実験の建設が始まったときに、日本はこのテーマを旗に掲げてわずか数人のグループとして参加しました。その意味で、今回の成果は、私たちにとっての一丁目一番地であり、20年もの間追求し続けた研究テーマにおける一つの節目となる到達点です。当初は、IceCube 実験で超高エネルギー宇宙線の研究など無理だろうという懐疑的な見方が支配的でした。順風満帆の船出ではなかったわけです。私を含め創業メンバーは天邪鬼だったのでこれが逆に良かったのかもしれません。2012年の超高エネルギー宇宙ニュートリノの発見、2016年の最高エネルギー宇宙線起源定説への反証、2021年の超高エネルギー反電子ニュートリノの発見という一連の成果を経て、ついには、超高エネルギー宇宙線の組成、すなわち、この放射が「何でできているか」という根本的な疑問に、ニュートリノを使って何かを言うところまでたどり着いたわけです。

 長いようで短かった20年間でした。この次の20年も、エキサイティングなものにすべく、千葉大学ハドロン宇宙国際研究センターは前進し続けます。ご期待ください。


■論文情報■

  • タイトル:A search for extremely-high-energy neutrinos and first constraints on the ultra-high-energy cosmic-ray proton fraction
         with IceCube
  • 掲載誌: Physical Review Letters
  • 著者:  IceCube Collaboration
  • DOI: