アイスキューブ実験
アイスキューブ(IceCube)実験は南極点直下の氷中1500mから2500mの深さに5160個の直径約33cmの球状をした光検出器を埋め込んで宇宙から飛来する高エネルギーニュートリノを観測する12カ国共同プロジェクトです(2018年現在)。
ニュートリノは他の物質とほとんど相互作用しないため、宇宙空間を直進することができます。地球に飛来する高エネルギー粒子(宇宙線)の起源を明らかにすることは100年来の謎でしたが、宇宙線は磁場によって曲げられたり、宇宙背景放射と相互作用してエネルギーを失ったりするため、その発生源を特定することは困難です。高エネルギーハドロン(陽子・中性子など)から放射されるニュートリノを捕えることによって、高エネルギー宇宙線の放射源をピンポイントで特定することができると期待されています。
小柴教授がノーベル賞を受賞したことで有名な宇宙ニュートリノ観測装置「カミオカンデ」ではニュートリノが地下に蓄えられた水と相互作用することによって放射される光(チェレンコフ光)を光電子増倍管を用いて検出しました。アイスキューブでは1立方kmの南極の氷を用いてニュートリノを検出します。その体積はスーパーカミオカンデの2万倍です。実験装置の建設は5年以上かけて行われ、2010年12月に完了、2011年4月からは全検出器を用いた観測が始まりました。
千葉大学アイスキューブグループは完成したアイスキューブによる観測データを解析して1.2PeV(PeVはエネルギーの単位で10の15乗電子ボルト)と1.4PeVのニュートリノが氷と相互作用して放射されたチェレンコフ光を捕えたと考えられる事象を発見し、2012年6月に開催された国際会議で発表しました。これは、理論的に予言されていた高エネルギー宇宙ニュートリノが実在することを示す世界初の観測成果です。