ICEHAPNEWS vol.6
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また、6年前にRAM掘削機により開けられた穴は新しく降った雪により約1.5m程度下に埋まっており、まずはその穴を雪かきをして探し出すという事から始めなければなりませんでした。20m程度離れた2つの穴を3日がかりで探しだし、2つのアンテナを各穴に入れ、ネットワークアナライザを用いてアンテナの性能(反射、ゲイン)を測定しました(図3参照)。図4に南極で測定した新型細径アンテナのゲイン並びに千葉大学における空気中での測定結果を載せました。南極での測定結果は少し不定性が大きいように見えるものの、空気中での測定との合いも良く、貴重なデータが得られました。今後は氷中でのシミュレーションも行い、測定結果と比較し、氷中でのアンテナの性能を求めた後にシミュレーションによりニュートリノ事象に対する感度を見積もる予定です。 現在3ステーションからなるARA望遠鏡ですが、今年の末にさらに3ステーション建設予定です(オリジナルアンテナを用いる)。これにより超高エネルギーニュートリノに対する感度はIceCube望遠鏡を凌駕します。その建設に向けたケーブル設置作業も今回南極に行った際に行ってきました。これと平行して細径アンテナの開発もさらに推し進め、ARA建設の早期実現、超高エネルギー宇宙線由来の超高エネルギーニュートリノの世界初観測を目指します。 あまり南極に関するお話しができませんでしたが、とにかく凄いところでした。毎日雪かきをしたり、軽い凍傷になったりと色々と大変でした(5キロ痩せました!)。その話はまた別の場所でお話ししたいと思います。穴を掘るのは僅か30分足らずですみ、これにより建設時間並びに建設コストを大幅に削減できます。しかし、従来の穴の大きさは直径15㎝でしたが、このRAM掘削機により開けられる穴の直径は10㎝で、この小口径の穴に合うサイズのアンテナを開発する必要がありました。千葉大学ではまずシミュレーションにより、アンテナを細くしながらできるだけオリジナルの感度を維持するようにアンテナ形状を最適化し、図2に示すような細型アンテナを製作しました。 アンテナの性能は周りの媒体によって少なからず影響を受けます。実験室においてアンテナの周囲を氷で囲うのは難しいので、氷中での新型細径アンテナの性能を測定するために実際に南極に赴きました。南極は一面の雪景色で非常に美しい場所でしたが、その一方、体感気温は−40度を下回り、装置も思うように動かず、私が今までで体験した中でも一番に厳しい環境でした。*3 チェレンコフ光 荷電粒子が物質中を、その物質中での光の速度よりも速く走るときに放射される光。図4: 細径アンテナのゲイン 。赤線は空気中、青線は氷中での値、また実線が測定値、破線がシミュレーションを表す。図2: ARAオリジナルアンテナ(右上)と千葉大学で新たに開発した細型アンテナ(左下、古河C&B製作) 図3: ARA新型細径アンテナの南極での実地試験の様子。約1.5mもの雪かき後に以前に開けられたRAM掘削機による穴を発見。 Realized GainFrequency[GHz]Gain[dBi]南極での実地試験今後の計画

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