ICEHAPNEWS vol.6
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  今までに1020eVを超える非常にエネルギーの高い粒子が宇宙から飛来してきているのが観測されています。この粒子は宇宙線と呼ばれ、特にエネルギーの高い1019 eVを超える超高エネルギー宇宙線は宇宙の中で起こる高エネルギー天体現象の中で加速されていると考えられていますが、その起源や組成等は良く分かっていません。このような超高エネルギーの宇宙線は宇宙を伝搬する間に宇宙を瀰漫するビッグバン由来の3Kの宇宙背景放射と相互作用し、超高エネルギーのニュートリノが作られることが分かっています。ですから、この超高エネルギー宇宙線由来の超高エネルギーのニュートリノを検出することで、謎に満ちた超高エネルギー宇宙線の起源に迫ることができます。特に、超高エネルギー宇宙線はこの反応によってエネルギーを失うため、約1億光年を超える場所からは地球に届きませんが、この反応により生成されるニュートリノは宇宙深部からも到達可能であり、超高エネルギー宇宙線の宇宙における進化の歴史を探る*1 フラックス 流束(単位時間単位面積あたりに流れる量)のこと*2 ARA望遠鏡=Askaryan Radio Arrayの略。ニュートリノが水分子と反応した際に放射されるチェレンコフ光のうち、電波領域の電磁波を検出しニュートリノを捕える。図1: ARA望遠鏡によるニュートリノ検出の概略図。ニュートリノが物質(氷)と反応した際に放出される電波領域におけるチェレンコフ光*3を南極氷河中に埋められたアンテナにより検出する。方まで届きます。このため超高エネルギー領域では電波信号がニュートリノを検出する最適な信号となります。このためARA望遠鏡はアンテナを用いてニュートリノ由来の電波観測を行います(図1参照)。また減衰長が1㎞と長いので、検出器を約1㎞間隔で設置する事が可能であり、非常に大きな検出器を比較的安価に作る事ができます。これにより未だに観測されていない超高エネルギー宇宙線由来の超高エネルギーニュートリノの世界初観測を目指します。 ARA望遠鏡の建設を更に推し進めるために千葉大学では新型細径アンテナを開発中です。建設の一つのボトルネックが氷の掘削です。ARA望遠鏡のアンテナは南極氷河中200m の深さに設置されています。また1つの縦穴を掘削するのに約10時間かかっています。この掘削時間を短縮するために、アメリカの共同研究者がRapid Air Movement(RAM)掘削機という空気圧を用いた新型の掘削機を開発していました。このRAM掘削機を用いると深さは50m しか掘れませんが、1つの事ができます。 超高エネルギーニュートリノのフラックス*1自体が低いのと、ニュートリノは殆ど物質と反応しないため、その検出には非常に大きな検出器が必要になります。このため現在南極にて100㎢という巨大な超高エネルギーニュートリノ望遠鏡ARAを建設中です。独立に動く全37ステーション完成時には、このARA望遠鏡*2の超高エネルギーニュートリノに対する感度は現在最も感度の良いIceCube望遠鏡の約10倍に達する予定です。1017 eVを超える超高エネルギーニュートリノからの電波信号は電波の干渉効果により可視光の信号よりも大きくなります。また、電波の南極氷河中での減衰長は約1㎞で、可視光のものよりも約10倍長く、信号が減衰せずに遠謎に満ちた超高エネルギー宇宙線の起源を求めて超高エネルギー宇宙線からの超高エネルギーニュートリノの世界初観測を目指す新型細径アンテナの開発 理学研究科・助教ニュートリノ天文学部門間瀬圭一超高エネルギーニュートリノ望遠鏡ARAの新型アンテナの南極における試験Report now 1

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