ICEHAPNEWS vol.4
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 アイスキューブの実験結果は、ステライルニュートリノの存在のヒントとなった特異な振動パターンが確認された許容パラメータスペースをも99%の信頼度をもって除外しています。また、アイスキューブの研究員カルロス・アルゲレスは、「我々が、ステライルニュートリノが発見される可能性のあるパラメータスペースを縮小した結果、その存在が疑問視され、これからの探査方針にも影響するでしょう」と話しています。 ステライルニュートリノが実在するという可能性を完全に否定はできませんが、その存在については今まで以上に不確かになったと言えるでしょう。これまで確認されている3種類のニュートリノ※1とは、別に、4つ目の新種が実在するのではという説があります。IceCube観測機関は、そのステライルニュートリノの調査結果をまとめた論文を発表しました。これについてIceCubeのサイトで掲載された記事をご紹介したいと思います。※1 「電子型・タウ(τ)型・ミュー(μ)型」の3種類。※2 「Searches for Sterile Neutrinos with the IceCube Detector」Physical Review Letters arxiv.org/abs/1605.01990※3 ステライルニュートリノと他の3種の活動的ニュートリノとの相対質量と混合角 重力でのみ相互作用するステライルニュートリノは、ニュートリノの質量の謎や暗黒物質との重要な関連性についての答えになるかもしれません。ステライルニュートリノは、地球の通過時に大気ミューオンニュートリノが大幅に消失する効果をひきおこすと予想されています。アイスキューブ・コラボレーションは、このステライルニュートリノの研究結果を本日Physical Review Letters誌に投稿しました※2。 1998年のニュートリノ振動発見以降、様々な研究機関が異なるニュートリノの振動パターンを観測してきました。そして、LSNDやMiniBooNEなどの実験グループが、3種のニュートリノのモデルでは説明のつかない特異な現象を見つけ、ステライルニュートリノの存在を主張しました。その後のステライルニュートリノの検出実験は今のところ成功せず、その度にステライルニュートリノのパラメータスペース※3は、狭められています。  アイスキューブによる探査では、ステライルニュートリノが振動により共鳴効果を引き起こすと予想される320 GeVから20 TeVのエネルギーの大気ニュートリノが対象となっています。ステライルニュートリノのモデルでは、数TeV辺りのエネルギーでのミューオン反ニュートリノの著しい消失が予想されます。ステライルニュートリノが本当に存在するのであれば、南極へ到着する大気ミューオンニュートリノや反ニュートリノの合計数に大幅な減少が見つかるはずです。 「ステライルニュートリノの発見に至らず、これまでよりも更なるパラメータスペースを除外しました」と共同研究者のベン・ジョーンズは言います。謎を解くカギになる?新たなニュートリノ疑問視されるステライルニュートリノWhat's New 1アイスキューブ実験の結果。90%の信頼度(CL)による輪郭線(オレンジの太線)と、疑似データによる68%(緑)と95%(黄色)の輪郭の帯がそれぞれ表示されている。その輪郭と帯は、以前の実験結果の除外箇所(90%CL)及びMiniBooNEやLSNDの容認範囲(90%CL)とほぼ重なっている。A rst search for sterile neutrinos in IceCube By Sílvia Bravoより引用https://icecube.wisc.edu/news/view/416最近のアイスキューブの論文よりIceCubeによるステライルニュートリノ初探査文・訳:高橋 恵(ICEHAP)©IceCube Collaboration

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