ICEHAPNEWS vol.3
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 ARA望遠鏡はニュートリノが南極の氷河と反応した際に発せられる電波信号を検出します。この電波信号は発生時に干渉効果により信号が増幅され、また南極氷河中では1kmも伝搬するので、ニュートリノを観測するのに最適です。ニュートリノ事象から発せられる電波信号強度は電磁気学の知識を基に理論的に計算可能ですが、観測結果を確固たるものとするためには実験を行い検証する必要があります。南極氷河中でニュートリノ事象を擬似的に作り出すことはできないために、アメリカ、ユタ州にあるTelescope Array(TA)*2実験が持つ40 MeVの電子ビームを氷に照射し、擬似的にニュートリノ事象を再現しました。実際に電子が氷を通ると電波が発生することが確認されました。現在、取得したデータを詳細に鋭意解析中です。 今までに1020eVを超える非常にエネルギーの高い宇宙から飛来する粒子(宇宙線)が観測されています。この超高エネルギー宇宙線はガンマ線バーストや活動銀河核等の宇宙の中で起こる高エネルギー天体現象の中で加速されていると考えられていますが、その起源や組成等は良く分かっていません。このような超高エネルギーの宇宙線が宇宙を伝搬する際に宇宙を瀰び漫まんする3 Kの宇宙背景放射*1と必ず相互作用し、超高エネルギーのニュートリノが作られることが分かっています。ですから、この超高エネルギーのニュートリノを検出することで、謎に満ちた超高エネルギー宇宙線の起源に迫ることができます。しかしながら、ニュートリノは殆ど物質と反応しないので、その検出には巨大な大きさの検出器が必要になります。このため現在南極にて100㎢という非常に巨大な超高エネルギーニュートリノ望遠鏡ARAを建設中です。アメリカ、ユタ州で行われたARA望遠鏡較正実験の様子。中央にあるコンクリートブロックに覆われているのがTA実験の電子加速器。40 MeVの電子が上方に放出される。そのブロックの上に小さく見えているのが氷標的。電子が氷中を通ると電波が放出される。この電波をARA望遠鏡のアンテナで観測した。実験終了後、共同実験者(一部)と記念撮影。*2Telescope Array(TA)実験=実験=日米露韓・ベルギーの国際共同実験で、米国ユタ州の荒れ地に観測装置を設置し、最高エネルギーの宇宙線を観測している。*1宇宙背景放射=およそ138億年前の宇宙の大爆発(ビッグバン)から出た光のなごりで、電磁波として宇宙のあらゆる方向から地球に飛んできている。謎に満ちた超高エネルギー宇宙線の起源を求めてユタ砂漠でARA望遠鏡を較正理学研究科・助教 ニュートリノ天文学部門間瀬圭一超高エネルギーニュートリノ望遠鏡ARAの氷中電子ビームによる較正Report now 2

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