ICEHAP NEWS vol.10
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IceCube、そしてその次へReportnow1*1 系統誤差 同じ方法を用いて測定された測定値に対して、系統的に生じる誤差。偶然によるものではなく、何か原因があって起こる誤差。*2 アレイ 南極点の氷河中に埋設されている現IceCube光検出器DOMの配列。*3 光電子増倍管 ニュートリノが氷と反応した際に発生する光を増幅する装置。大きな電球のような形をした、浜松ホトニクス社製をIceCubeでは採用しており、現検出器のDOMは下向きに1台、新型のD-Eggには上向きと下向きに1台ずつ装備されている。 南極点にある一立方キロメートルの南極氷河を用いて宇宙からの高エネルギーニュートリノを観測する巨大装置IceCubeニュートリノ望遠鏡は、2005年1月初めの60個の光検出器の埋設を皮切りに2005年からその部分稼働を、2011年からはフル稼働を続けています。そして、2012年の世界初となる宇宙ニュートリノの観測以降、毎年その観測手法を改善し、系統誤差*1の削減を行ってきました。現在も、暗く静かな南極点氷河内にあるという地の利を生かし99.8%を超える高稼働率で定常的に宇宙からくるニュートリノの到来方向やエネルギーをモニターしています。そこから得られた宇宙ニュートリノの情報は、日本のかなた望遠鏡やすばる望遠鏡をはじめとする世界中の望遠鏡と共有され、そこからさらなるニュートリノ発生源の特定、そしてその発生機構の解明を目指しています。 現在、IceCubeが目指すべき次のステップとして、二つの計画が進行しています。一つは今から約3年計画のIceCube検出器のアップグレード(IceCube-Upgrade、図1左の赤丸)です。IceCube-Upgrade計画は、図1中央のIceCubeアレイ*2の中心部に7本の穴を掘り、そこに約700台の高性能光検出器を数多くの較正装置と共により密に埋設し、南極氷河中の光の伝搬の不定性を初めとする測定の系統誤差を低減させ、より低エネルギーのニュートリノの観測性能を各段に向上させることを目標としています。特にこれまで測定の難しかった大気タウニュートリノ流量のより詳細な測定を行います。図2では、現在のタウニュートリノ流量の理論予測値を1とした時、どの程度の精度でその流量を測定することができるかを表しています。世界最高感度での測定が期待できます。 もう一つは今から約10年計画、6年後には部分的な稼働を目指す次世代ニュートリノ望遠鏡計画IceCube-Gen2 (図1右の青い部分)です。IceCube-Gen2では、IceCubeアレイの周りに、IceCubeと比較して約2倍の間隔で約一万台の光検出器を埋設します。実効検出体積を約8倍にすることで、ニュートリノ点源検出感度を5倍グローバルプロミネント研究基幹・教授ニュートリノ天文学部門石原 安野IceCube実験アップグレード計画とその準備状況図1:IceCube-Gen2の概要赤い部分が現在のIceCube検出器。水色の領域に新たな光検出器を埋設する。Upgradeアレイは、IceCubeの中心部にインストールされる。図2:Upgradeアレイの大気タウニュートリノに対する感度

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